新潟県で開催される「大地の芸術祭」では、自然とアートが融合した不思議な体験ができる作品が数多く展示されています。
その中でも一際異彩を放っているのが「夢の家」というアート作品。
名前からして気になりますが、なんとここは夢を見るために泊まる宿泊施設。
その空間の独特さに、「日本一怖い宿かもしれない」と、そんな風に感じてしまうほどの雰囲気でした。
今回は実際に「夢の家」を見学してきたので、その不思議な空間を詳しくご紹介します。
訪問の様子は YouTube でも公開中です。
夢の家の雰囲気を動画でチェックできます。記事の一番下に動画を記載しています!
夢のために泊まる宿が新潟に?「夢の家」とはどんな場所

新潟県十日町市の山あいにたたずむ「夢の家」は、世界的なパフォーマンスアーティストであるマリーナ・アブラモヴィッチによって制作された、宿泊可能なアート作品です。
外観は昔ながらの古民家ですが、ただの古民家ではありません。
内部には幻想的な空間が広がり、宿泊者は専用のパジャマを着て一夜を過ごし、翌朝に夢を「DREAM BOOK」に記録するという体験が用意されています。
宿泊体験を通して夢を見ること自体がアートとなるこの施設。
実は宿泊せずとも、見学料金を払えば中を見学することができます。
今回はその見学体験をしてきました。
内部はどうなってる?新潟「夢の家」の中をじっくりご紹介
「夢の家」の内部はどうなっているのか。今回は、実際に見学して印象に残った空間の様子を、階ごとにご紹介していきます。
「夢の家」1階の内部を見学

「夢の家」の玄関をくぐると、まず現れるのは昔ながらの和風建築らしい、土間と囲炉裏のある空間。
黒い壁に囲まれた静かな室内には、木製の神棚や黒電話など、どこか懐かしく、静けさがしっとりと広がる落ち着いた空間が印象的でした。

居間には大きなテーブルが置かれ、その上には整然と並んだ数十個の水入りグラス。
壁際にはマリーナ・アブラモヴィッチに関する写真集や本が積まれており、ここがアート作品の内部であることを思い出させてくれます。

そして、宿泊者用のカラフルなパジャマ(赤・紫・黄など)がずらりと壁に掛かっている部屋も。
まるで宗教的な衣装のようにも見え、その色彩が空間の静けさと対照的に際立っています。
実際に宿泊する場合は、このパジャマに着替えて眠り、翌朝に見た夢をノートに記録するという体験が用意されています。

壁一面に赤い英字で描かれたメッセージアートも、かなり印象的です。
儀式めいた言葉が並び、どこか不思議な空気を漂わせていました。

浴室は入口付近にあり、もともとは馬小屋として使われていた場所とのこと。
現在は無機質なタイル張りの空間に大きな鉄製のバスタブがぽつんと置かれていて、素朴な構造でありながら、どこか日本離れした空気を感じさせる一角でした。
宿泊者は、このバスタブに薬草を入れてゆっくりと湯に浸かることができ、身体を整えつつ、夢へと向かう気持ちをゆっくりと落ち着けていくようです。
新潟「夢の家」2階の内部を見学

階段をのぼって2階に進むと、空気が一変し、静けさの中にどこか張りつめたような不気味さが漂っていました。
2階には、色の異なる4つの部屋があります。

それぞれの部屋には「赤」「青」「緑」「紫」の色ガラスが使われており、窓から差し込む光が部屋全体をじわりと染め上げていました。
どの部屋にも共通して置かれているのが、棺桶です。
宿泊者はこの棺桶の中に入って眠り、一夜を過ごします。

そして棺桶の底には、DREAM BOOKと呼ばれる分厚い本が収納されています。
この本には、自分がその夜に見た夢を書き残すことができ、実際に宿泊した人たちが綴った夢の記録も自由に読むことができます。

ページをめくると、そこには詩のような文章や、物語の断片、意味のわからない言葉やイラストなどが並んでいて、まるで他人の夢の中を、そっとのぞき見ているような感覚になります。
アクセス・料金について、新潟「夢の家」を訪れるには
宿泊を希望する場合は、大地の芸術祭公式サイトから事前に確認・予約するのがおすすめです。
なお、僕が訪れた時は見学のみであれば予約なしでも入ることができました。
- 住所:新潟県十日町市松之山湯本643
- 営業時間:「2025年宿泊」6/1~10/13 ※火水定休
- 電話番号:025-761-7767 「大地の芸術の里」
- 交通公共機関の場合:北越急行ほくほく線「まつだい駅」から路線バス・タクシー
- 見学料金:一般400円・小中200円
- 宿泊料金:1泊 33,000円(1日1組限定)
- 予約方法:大地の芸術祭公式サイト夢の家からオンライン予約
- 予約サイト:夢の家 – 泊まる|大地の芸術祭
山間部に位置しているため、公共交通機関でのアクセスにはやや不便がありますが、周辺には温泉地や他の芸術祭作品も点在しているため、1日かけてゆっくり巡るのがおすすめです。
新潟「夢の家」で感じたことと思ったこと
見学という短い滞在だったにもかかわらず、「夢の家」は記憶に強く残る場所になりました。
どの空間も静かで、きれいに整えられていて、不安になるような怖さも確かにあってどこか心の奥がざわつく感覚がありました。
中でも赤い部屋に入ったときは、光の色と静けさが相まって、思わず足がすくむような怖さを感じました。
棺桶の中で眠るという演出は強烈で、宿泊していたらどんな夢を見ただろうと、そのときは想像してしまいました。
夏に訪れたこともあり、外から聞こえてくるひぐらしの鳴き声が空間の静けさと重なって、より一層不思議な感覚を引き立てていたのを覚えています。
今回僕は見学のみでしたが、それでも十分に「夢の家」の空気に触れることができました。
静かな山の中で、アートと夢と向き合うこの体験は、どこか自分の内側を見つめ直すような時間にもなった気がします。
次こそは実際に泊まって、夢を見て、「DREAM BOOK」に何かを残してみたい。
そんな風に思わせてくれる、不思議で魅力的な場所でした。
「2024年7月25日」